研究概要 |
ペルオキシソーム欠損症は脂肪酸代謝など生体に重要な代謝機能を有するペルオキシソームが先天的に欠損し、脳肝腎などに重篤な異常を呈する常染色体劣性の遺伝病で、臨床的には重症度の異なる3つの亜型が存在する。本研究者らは本症の病因、病態解明について研究を行ってきたが、今回の研究では九州大学理学部藤木幸夫教授、姫路工業大学理学部大隅隆教授との共同研究にて以下の成果を上げた。 1、 細胞融合を用いた相補性解析より本症を12個の遺伝的相補性群(A-H.J,2,3,6)に分類した。 2、 ペルオキシソーム膜蛋白抗体を用いた検討により、12群のうち9群は蛋白のペルオキシソーム局在化機構の異常、残り3群はペルオキシソーム膜合成異常に起因すると考えられた。 3、 CHO、酵母のペルオキシソーム形成遺伝子より以下の群の病因、患者変異を新たに解明した。 (1) E群の病因PEX1遺伝子をCHO変異細胞を用いた系でクローニングし、Zellweger症候群患者1例でミスセンス変異とスブライシング異常のcompound heterozygoteによることを明らかにした。 (2) 3群の病因PEX12遺伝子をCHO変異細胞を用いた系でク6-ニングじ、Zellweger症候群患者2例でそれぞれミスセンス変異とスプライシング異常を明らかにした。 (3) B群の病因PEX10遺伝子を酵母PEX10遺伝子よりクローニングし、Zellweger症候群患者1例で2塩基欠失を明らかにした。 (4) D群の病因PEX16遺伝子を酵母PEX16遺伝子よりクローニングし、Zellweger症候群患者1例でナンセンス変異を明らかにした。 (5) rhizomelic chondrodysplasia punctata患者でPEX7遺伝子の新たなナンセンス変異を同定した。 4、 ペルオキシソーム欠損症の患者細胞が30℃の培養下でペルオキシソームが正常化するという遺伝病ではこれまで報告されていない極めて興味深い現象を見出し、E、F群においてPEX1,2遺伝子の温度感受性変異と重症度の関係を明らかにした。
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