ペルオキシソーム欠損症は蛋白のペルオキシソームへの細胞内輸送や膜形成の異常に基づく常染色体劣性の遺伝病で、平成10、11年度の本科学研究により申請者は以下の点を明らかにした。 (1)本症に12個の遺伝的相補性群が存在し、抗ペルオキシソーム膜蛋白抗体を用いた検討より、9群では蛋白のペルオキシソームへの細胞内輸送異常に起因し、残りの3群ではより早期の膜形成過程での異常に起因すると考えられた。 (2)ペルオキシソームが欠損したCHOや酵母のmutantから得られたPEX遺伝子のヒトhomologを患者細胞内に発現させることより3、E、B、D、J群の病因がPEX12、1、10、16、19であることを明らかにし、それぞれの患者変異部位も解析した。 (3)本症の軽症型患者細胞では30℃に培養温度を下げると蛋白がペルオキシソームに正常に局在する温度感受性現象を有することを明らかにし、発現実験より温度感受性変異の存在も明らかにした。 (4)PEX13がH群の病因で、軽症型ではSH3ドメイン内に温度感受性を有するミスセンス変異を有しており、温度による立体構造変化が発症に関わる可能性が示唆された。 (5)臨床像と遺伝子異常との関係として各群に共通して重症型ではナンセンス変異やフレームシフト、軽症型ではミスセンス変異を認め、前者では各蛋白ともほとんどペルオキシソームに輸送されないのに対し、後者では蛋白や細胞ごとにheterogeneityに輸送を認めており、それが残存活性や臨床像の軽症化に相関していた。
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