昨年度の研究の中で、グルタミン酸受容体の内のε2に対する自己抗体の高感度検出システムを確立したのに引き続いて、グルタミン酸受容体抗体病の早期診断・早期治療を可能とするため本年度は以下のような研究を行ってきた。 1.グルタミン酸受容体(ε2以外)に対する自己抗体の検出システムの確立 テトラサイクリンシステムのトランスアクチベータをステイブルトランスフェクションした細胞(3T3-TA)に、δ2グルタミン酸受容体のレポーター遺伝子をエレクトロポレーションし、4つのクローンがδ2-cDNAを組み込んでいる事をPCRにて確認した(3T3-TA-δ2)。3T3-TA-δ2のホモジネートをδ2抗体を用いたウエスタンブロットにて解析したところ、4つのクローンでδ2蛋白の発現を確認できた。この事より、抗δ2抗体のスクリーニングが可能となった。 2.グルタミン酸受容体自己抗体病の疾患単位の確立 昨年度確立したε2グルタミン酸受容体自己抗体のスクリーニングシステムを用いて、難治性てんかん患者さんの血清を中心としてスクリーニングしたところ、小児の慢性進行性持続性部分てんかん患者4例、症候性部分てんかん1例が陽性となった。小児の慢性進行性持続性部分てんかんの中にε2に対する自己抗体が病態に関与していると思われる症例があった。 3.自己抗体陽性例での免疫学的早期治療の検討 ε2グルタミン酸受容体自己抗体陽性例の小児の慢性進行性持続性部分てんかんの1例で、γーグロブリン大量療法を試みたところ、持続性ミオクローヌスの減弱とけいれん発作の現象を認めた。
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