研究概要 |
先天性N-結合型糖鎖欠乏(CDG)症候群は1982年、ベルギーのJaekenによって初めて記載された疾患で、血清糖蛋白質の糖鎖がの結合数が少ないことを特徴とする。1992年にヨーロッパで広く知られかなりの患者数が存在することが明らかになり、我々も日本人で3症例を記載した。1997年にはベルギーのグループによって本疾患の遺伝的欠陥がphosphonnomutase2遺伝子にあることが明らかにされた。同じ年、我々は、メタボリックラベルによって、phosomannomutase2が触媒する過程にはブロックはないことを報告し、dehydrodolichol reductionにブロックがある可能性を報告した。しかし、この酵素は遺伝子の単離ができす、我々のメタボリックラベルがどの様な意義を持つのか明らかではない。遺伝的欠陥の論議は完全には結論がでていず、遺伝的異質性の可能性も残っている。 一方、CDG症候群は小脳・脳幹低形成、末梢神経障害などをおこすが、この病態はまだ明らかではない。小脳・脳幹の発生と機能維持、末梢神経の機能維持の障害に関与する糖蛋白があるはずであるが、その糖蛋白は同定されていない。 今年度リソソーム酵素に注目した。患者血清中のαフコシダーゼ、βヘキソサミニダーゼは、等電点電気泳動で糖鎖の少ない異常なバンドを認めた。しかしながら、線維芽細胞の培養液および細胞内からは糖鎖の少ない異常バンドや酵素活性の異常は検出されなかった。しかし、患者細胞内では細胞内αチェイン前駆体の増加を認め、リソソーム酵素のプロセッシングに異常がある可能性が示唆された(Ichisaka et al., 1998)。リソソーム酵素のプロセッシング異常が神経機能障害と関係している可能性が示唆された。
|