研究概要 |
従来、免疫臓器として、殆ど注目されていなかった消化管は、最近、特異な免疫機構を有し、免疫器官として重要な役割をはたしていることが認識されつつある。 しかし、様々な抗原刺激との最初の接触点となる消化管上皮細胞と繊維芽細胞、各種白血球の局所免疫応答における相互作用については殆ど解明されていない。 このことをふまえて1)抗原刺激の違いによる消化管上皮細胞から分泌されるケモカイン蛋白のパターンの違い、2)産生されたケモカインの生物学的活性の変化、3)消化管上皮細胞は、いかにしてantigenpresenting cellとしてTリンパ球に抗原情報を伝達してゆくのか、4)従来よりその働きが全く解明されていないintra-epithelial lymphocyteが、この局所免疫反応及び抗原情報伝達の中でどのような役割を担っているのか、更に、5)in vitro消化管モデルを作製して1)-4)の点について免疫学的のみならず、ケモカイン等が消化管上皮細胞膜に電気生理学的にどのような影響を及ぼすのか、以上の点について明らかにし、その臨床応用の可能性について研究、検討中である。 今年度〔平成10年度〕は以下に述べるデータを得た。1)抗原刺激の違いにより、消化管上皮細胞〔T8 4,HT2 9,CaCo2等〕が分泌するケモカインパターンには差があること、すなわち細菌感染の場合はCXCケモカイン優位に、ウイルス感染の場合はCCケモカイン優位に産生されていること。2)産生されたCXCケモカイン蛋白は生物学的活性を持っていること。3)CCケモカイン蛋白の生物学的活性を検討すること等の為に必要となる肥満細胞株を作製した。すなわち臍帯血中の単核球をstem cell factor,IL-6、prostaglandin E2と長期培養することにより肥満細胞株が樹立された。 次年度はこれらのデータを元に研究を継続、進展さす予定である。
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