研究概要 |
小児期の骨量獲得における成長ホルモンの影響を検討するために、小児期の骨量獲得過程を明らかにし、成長ホルモン分泌不全児における骨量と、成長ホルモンの骨量獲得に及ぼす影響を検討した。84名の成長ホルモン分泌不全患児を対象に研究を行った。日本人正常対照より求めた年齢別基準値をもとに、患児の第2-4腰椎骨密度を評価し、成長ホルモン治療中の骨密度を縦断的に評価した。成長ホルモンは0.5IU/kg/weekの投与量で週5-7回皮下注にて投与し、3年間の投与中の腰椎骨密度の変化を検討した。治療前のZscoreは女児で1.52±0.96SD、男児で-0.87±0.80SDであり、正常対照より低値であった。体積補正した骨密度を計算すると正常との差はわずかとなったが、低値である傾向は変わらなかった(女性-0.49±1.4SD、男性-0.37±1.47SD).女児においては、腰椎骨密度のZscoreは成長ホルモン投与開始1年目から増加し、3年間続いて増加した(開始時-1.52±0.97、 1年目-1.37±0.94SD、2年目-1.35±1.07SD、3年目-1.27±1.21)男児においては1年目における増加が認められず2年目以降直線的に増加がみられた(開始時-0.87±0.80SD,1年目-0.91±0.79SD,2年目-0.84±0.90SD,3年目-0.50±0.81SD).各パラメータの分析より、成長ホルモンは骨の大きさを持続的に増加させる一方、骨量の増加は男女とも1年目では著明ではなく、2年目以降に明かとなってくることが明かとなった。 以上より、成長ホルモンは成長段階にある骨量獲得に重要であり、骨の大きさを増加させる作用とともに、骨密度を増加させる作用を有していることが明らかとなり、更に、両作用の間に時間的なずれが存在することが明らかとなった。
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