研究概要 |
Leigh脳症は中枢神経系における特異的な画像所見および高乳酸血症を呈し、精神運動発達遅延、痙彎などの神経症状を伴う小児難病である。本症の病因としてはピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)や電子伝達系酵素の異常およびミトコンドリアDNA変異などが報告されている。またLeigh脳症の治療法は未だ確立されていないが、本症にはビタミンB_1大量投与により臨床症状の改善、乳酸値の低下がみられるビタミンB1反応例が存在する。しかし、これらのビタミンB_1反応性の機構には不明な点が多いため、これらの解明および治療法の確立が本研究の目的である。 本研究ではまず全国から当科に酵素診断を依頼された44例のLeigh脳症患児から得た培養細胞を用いて、ビタミンB_1酵素であるPDHCを中心に検討して、22例の病因を明らかにした。すなわちPDHC異常症5例、複合体I欠損症4例、複合体IV欠損症4例,ミトコンドリアDNA変異9例(T8993G7例、T8993C1例、A8344G1例)であった。Leigh脳症患児の50%で病因が判明したが、半数の症例では病因は不明であった。さらにビタミンB_1反応性高乳酸血症患者13例中5例がLeigh脳症患児であった。これらの病因検索では2例がPDHC異常症であったが、他の3例の病因は不明であった。 病因不明のLeigh脳症患児において、新たなLeigh脳症をきたす病因を見いだすために、これまでLeigh脳症患児で高率に変異が見いだされているATPase6領域のミトコンドリアDNA変異の有無をSSCPを用いて検討した。これらにより、正常とは異なるsscpパターンを示す2例を見いだした。今後はこれらの遺伝子解析を行い病因を明らかにする。
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