Leigh脳症は乳幼児期に発症し中枢神経系の特異的な画像所見および高乳酸血症・高ピルビン酸血症を呈し、精神運動発達遅延、痙攣などの神経症状を伴う小児難病である。本症の病因としてはピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)の異常や電子伝達系酵素異常やミトコンドリアDNA異常などが報告されている。またLeigh脳症をきたすミトコンドリア病の治療法は未だ確立されていないが、本症にはビタミンB1大量投与により臨床症状の改善、乳酸値の低下がみられるビタミンB1反応例が存在する。しかしビタミンB1反応性の機構については不明な点が多いため、これらの解明および治療法の確立が急務である。 本研究ではまず全国から酵素診断を依頼された52例のLeigh脳症患児から得た培養細胞を検索して26例の病因を明らかにした。その内訳はPDHC異常症5例、複合体I欠損症4例、複合体IV欠損症4例、ミトコンドリアDNA異常症13例(T8993G変異10例、T8993C変異2例、A8344G変異1例)であり、ビタミンB1反応性PDHC異常症が4例みられたことより、本症の頻度が高いこととビタミンB1大量療法の有用性が判明した。最近、欧米人の複合体IV欠損症のLeigh脳症患児においてSURF-1遺伝子の変異が見出されたので、日本人患児のSURF-1遺伝子解析を行った。検討しえた3例中2例においてSURF-1蛋白を大きく変化させる新たな遺伝子変異を見出した。この結果により日本人のLeigh脳症の病因としてSURF-1遺伝子が重要であることが判明し、Leigh脳症をきたす新たな遺伝子変異が明らかになった。
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