研究概要 |
造血幹細胞移植術を発展させる目的で,患者自身から動員採取して移植術に用いる自家移植と,HLA不適合ドナーから同種移植術において純化CD34陽性細胞を利用することを研究してきた.本研究の最終年度にあたる平成12年度は,これまでの研究成果をもとに,実際に移植した症例(患者およびドナー)の追跡観察を主に実施した.その結果として,1年以上の長期的な造血機能および免疫機能の維持に何ら問題がないことが確認された.また,G-CSFの投与を受けたドナーの安全性についても何ら問題はなかった.造血器腫瘍の患者も特別な合併症を発症することはなかった.個々の症例を詳細に検討すると,比較的軽度のウイルス感染症で汎血球減少を来す例もあったが,その後の回復は順調であった.しかし,症例によってはドナーのリンパ球輸注を必要とする場合があるかもしれない.2年間の観察期間は移植後の観察としては長くはないものの,CD34陽性細胞が造血幹細胞として移植できることは十分に確認された.造血細胞移植術は造血器腫瘍のみならず,固形腫瘍の治療に応用されようとしている.したがって,従来の概念で造血細胞移植の適応を考えるのではなく,本研究で示されたように幅広く,非悪性腫瘍の治療にも応用されることになろう.その第一段階として自己免疫疾患への応用が確認された.純化CD34陽性細胞を用いた移植治療戦略の今後が期待される.
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