研究概要 |
本研究の目的は,若年性関節リウマチJRAの成長障害において,慢性炎症病態が骨代謝や内分泌代謝に及ぼす影響を検討し,その機序を解明することである. 1)JRAにおける成長障害 疾患活動性が持続するJRA患児では成長障害が疾患活動期に一致して進行していた。このことはJRAの炎症病態そのものが経過とともに成長障害を誘導することを示している。 2)JRAの成長率 全身型及び多関節型JRAでは、活動期に著しく阻害されるが、疾患活動性が鎮静化するとむしろ成長にはcatch up現象がみられ、治療終了となった症例(寛解期)では、その成長率は健康小児と同等のレベルに戻っていた。一方、少関節型JRAではいかなる疾患活動性であっても成長障害はみられなかった。 3)JRAの成長障害と成長関連因子 血中のIGF-1及びそのcarruer蛋白であるIGFBP3レベルは活動期に低値であり、寛解期では正常化した。 4)JRAにおける骨塩量 dual energy X-ray absorptiometry(DEXA)法で見た橈骨骨塩量は、活動期には低値で非活動期には増加し、寛解期には正常となり、3群間に有意差を認めた。JRAの成長率はOCと有意な相関を示し、ヒアルロン酸とも弱い相関を認めた。また、GF-1、IGFBP3とも相関する傾向を認めたが有意ではなかった。 本研究で、炎症病態の程度がJRAの成長障害や骨塩量減少と有意に相関することが明らかになり、その機序として、炎症病態下では特に骨芽細胞の増殖に関連するIGF-1/IGFBP3、成熟した骨芽細胞から産生されるオステオカルシンが抑制され、その結果、成長軟骨板の増殖伸展や骨形成が障害されることが示唆された。
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