研究概要 |
1)マウス多能性幹細胞と造血前駆細胞の恒常状態における増殖動態:BrdUrd-UV cytocide法により in vivoにおける幹細胞動態を検討した。day9 CFU-Sは投与開始後7日で殺傷率のplateu level(約30%)に達するのに対し、より未分化と考えられるday13 CFU-Sは緩徐な細胞回転を示し14日目に同レベルに到達した。次にIL-3とGM-CSFを刺激因子としてコロニー形成させた場合でCFU-GM動態を比較をしたところ、CFU-GMの殺傷率はIL-3群とGM-CSF群で異なり、それぞれの分画が同一ではないことが明らかになった。2)ヒト臍帯血中のCD34陽性細胞と造血前駆細胞の解析:G-CSFで動員した末梢血幹細胞検体を対照に、フローサイトメーターを用いて臍帯血CD34^+細胞の亜分画を解析した。臍帯血CD34^+細胞はCD33^-が43.2%(対照:23.6%)、CD38^-が16.3%(1.4%)、CD117^+が66.8(24.6%)と未分化分画が多く含まれていた。CD34^+細胞とCFU-GM,BFU-E,CFU-Mix数との間にはそれぞれr=0.607,0.961,0.852と有意の正の相関が認められた。3)LSCによる単一細胞レベルでのタンパク発現の解析:LSCによるCD34^+細胞解析の予備実験として、巨核球系細胞株CMKのcMplの発現を検討したが、良好な検出感度がえられず、この原因が抗体によるものか、機器の測定限界によるものかを現在検討中である。4)ヒト未分化前駆細胞の測定条件の確立:臍帯血CD34^+細胞を骨髄間質細胞上で液体培養し前駆細胞の産生を調べた。10^3個のCD34^+細胞を培養し2週目で150+16のCFU-GM,21+2.5のBFU-E,3+1のCFU-Mix,第5週目でそれぞれ42+13,2+2,0.3+0.3の前駆細胞が回収された。この方法では実験の度に使用する骨髄間質細胞が異なるので、この条件を一定にするために、最近供与されたヒトの造血幹細胞の維持が可能とされるマウス細胞株を用いてLTC-IC測定の基礎的条件の検討を現在進めている。
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