研究概要 |
1. 低カルシウム(Ca)状態のモデルラット作製および骨格筋障害分布の検索 ラットに離乳直後の3週齢から特殊飼料を与え血漿Caイオン,Ca,CKを測定,低Ca血症性高CK血症を確認した。骨格筋障害分布検索のため,特殊飼料(E;n=2),対照(C;n=2)の両群に対し麻酔下にてエヴァンスブルー(50μg/10g:体重)を腹腔内投与し,5.5時間後に過量の麻酔薬で死亡させた。いずれの部位の骨格筋も肉眼的に染色されておらず,膜電位を測定する筋はヒラメ筋とした。 2. 骨格筋細胞膜の安定性に関する電気生理学的検討 過量の麻酔薬で死亡させた後に両側のヒラメ筋を単離し(測定筋数=4),2種のCa濃度溶液(1.12mMおよび0.45mM)中で,ガラス管微小電極を用い静止電位および活動電位を測定した。対照ラット(測定筋数=8)も同様に測定してE,C両群の結果を比較し表面膜の興奮性を検討した。電位を測定し得た数は,(1)静止電位;E群・高Ca濃度溶液(E-HI)=20,低Ca濃度溶液(E-LO)=39,C群・高Ca溶液(C-HI)=89,低Ca溶液(C-LO)=89;(2)活動電位:E群・高Ca溶液(E-HI)=12,低Ca溶液(E-LO)=13,C群・高Ca溶液(C-HI)=21,低Ca溶液(C-LO)=21である。結果:(1)静止電位(平均±標単偏差):E-HI-72±3mV,E-LO-70±3mV,C-HI-68±5mV,C-LO-69±5mV(2)活動電位(Over Shoot,Action Potential 1/2 duration,Vmax,-Vmax):OS(mV)は,E-HI 0.2±5.5,E-LO-3.1±6.0,C-HI 10.2±8.4,C-LO 2.9±7.3,AP(ms)は,E-HI 3.2±0.7,E-LO 3.2±0.8,C-HI 2.5±0.7,C-LO3.0±0.4,Vmax(v/8)は,E-HI 64±19,E-LO 60±45,C-HI 89±27,C-LO 69±20,-Vmax(v/s)は,E-HI-26±7,E-LO -23±9,C-HI -37±13,C-LO -23±7であった。以上の結果より.4群間の表面膜興奮性に統計学的有意差はなく,低Ca状態下での高CK血症は骨格筋細胞膜の不安定性に起因するとは思われず,更に筋小胞体機能の検討が必要である。
|