この研究では、心血管系の弾力性の維持に重要な役割を演じているIII型コラーゲンを遺伝的に欠損したノックアウト(以下KO)マウスを作成し、そのマウス全身組織、とくに心血管系の肉眼的および病理組織学的診断を行い、III型コラーゲンが心臓および血管系の形態形成および機能の維持における役割を明らかにする(平成10年度)。これまでKOマウスの病理組織診断では、homozygoteマウスの皮膚は脆弱で、出生直後より皮下出血が多数みられ、生後2-3日以内に全例が死亡する。死亡した新生仔マウスには、肺実質や腹腔内、消化管内への出血が確認されている。一部のhomozygoteマウスでは、明らかな心奇形は認められないにもかかわらず、心室および心房壁が極端に菲薄化して著しい心拡大がみられ、胎生期より著しい心不全に陥っていた可能性が考えられる。また大動脈や気管、食道壁も菲薄伸展しているのが確認された。これらの所見は、III型コラーゲンが欠如するために、血管、気管、消化管壁が非薄化した結果と考えられる。現在heterozygoteマウスについても同様な病理検索を行っている。
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