研究概要 |
今年度は、in vitroで(神経芽種細胞株を用いて)、分化誘導時のmycN遺伝子(mycN)およびmxi1遺伝子(mxi1),max遺伝子(max)の発現変化を蛋白レベルとRNAレベルで検討した。 mycNの増幅と過剰発現が認められる神経芽細胞種株(KP-N-RTBM)をレチノイン酸誘導体(E5166)を用いて分化誘導し,形態的変化に先立つ細胞周期の変化と、mycN,maxおよびmxi1の発現変化を明らかにした。神経芽腫細胞の形態変化は、E5166処理後7日目頃から明らかとなったが、処理後48時間の時点で細胞周期解析でG0/G1期細胞の増加、S期細胞の減少がみられた。さらに24時間の時点ですでにmycN蛋白(MycN)の発現は低下するとともに、mxi1蛋白(Mxi1)の発現は増加し、max蛋白(Max)の発現は不変であったことがWestern blot法で示された。また、RNAレベルでも24時間の時点で、mycN mRNA発現の低下とmxi1 mRNAの発現の増加がNorthern blot法で認められた(日本小児科学会誌103巻5号掲載予定)。 さらに、E5166によって分化誘導されない(E5166分化抵抗性)の神経芽腫細胞株(KP-N-SILA)を用いて、同様にE5166処理後のMycN,Mxi1およびMaxの発現変化を検討しており、KP-N-SILAにおいてはMycN,Mxi1およびMaxの発現は変化がなかったという結果を得ている(未発表)。 これらの結果から、mycNの発現低下とmxi1の発現増加が、神経芽種細胞の分化初期の重要な遺伝子発現の変化であるということが明らかとなった。
|