神経芽腫の予後に大きく関与するN-myc遺伝子の腫瘍生物学的意義をの究明を目的とした。 レチノイン酸で神経細胞様細胞へ分化誘導される神経芽腫細胞株KP-N-RTの分化誘導過程において形態分化に先立ち、N-mycの発現が低下し、その拮抗因子Mxi1の発現が増加することを明らかにした。分化誘導に抵抗性の神経芽腫細胞株では上記の変化はおこらなかった。この結果より、N-myc遺伝子の発現低下は、神経芽腫細胞の神経細胞様細胞への分化初期の重要な遺伝子発現の変化であると考えられる。 また、KP-N-RTにおいては、腫瘍増殖因子であるinsulin-like growth factor (IGF)-IによりN-mycの発現が誘導されること、さらにこのIGF-IによるN-myc発現誘導がIG-I receptor(IGF-IR)/mitogen-activated protein kinase (MAPK)pathwayを介していることを見だした。神経芽腫細部においてN-mycによりIGF-IRの発現が翻訳レベルで誘導されるという報告と考えあわせると、神経芽腫ではN-mycとIGF systemがお互いに刺激しあい、postive feedbackをなし、その腫瘍増殖に関与していると考えられる。神経芽腫における、このN-myc/IGF system機構および、その細胞内情報伝達路のさらなる解明は、新たな治療の標的の発見につながるものと考える。
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