1.第VIII因子発現実験:Adenovirus expression vector kit(Takara)を使用して、プロトコールにそってCOS-TPC法により、E1およびE3遺伝子が欠損した非増殖型組換えアデノウィルスを作製した。組換えアデノウィルスは、Cytomegarovirus enhancer/chicken β-actin promoter/rabbit β-globin3'UTR制御下に、Bドメインを除去したイヌ第VIII因子遺伝子とrabbit β-globin polyAにより構成されている。この組換えアデノウィルスを種々の哺乳動物培養細胞(COS1、HepG2、HeLa)に感染させ、第VIII因子を発現させた。COS1細胞では4日後約0.6単位/ml、7日後1.0単位/ml以上、HepG2細胞でも4日後約0.8単位/ml、7日後1.0単位/ml以上の凝固活性を検出したが、HeLa細胞では検出できなかった。 2.発現第VIII因子と免疫学的影響:抗第VIII因子同種抗体の様々な免疫学的生化学的特性について(1)抗第VIII因子同種抗体のIgGサブクラス、(2)抗第VIII因子同種抗体の結合領域、(3)抗第VIII因子同腫抗体の第VIII因子抑制機序などについて明らかにした。抑制機序として、本研究で(1)第IX因子結合抑制作用、(2)第VIII因子のフォン・ヴィレブランド因子および血小板結合抑制作用、および、(3)活性型第X因子・トロンビンによる第VIII因子活性化の抑制作用を初めて明らかにした。さらに、抗第VIII因子自己抗体のなかでは第VIII因子/抗体複合体が免疫複合体として血液中に存在していることを初めて証明した。 3.血友病A遺伝子ゲノタイプと抗第VIII因子抗体発生の関係:インヒビター発生とHLA-DR4.1、DQ4およびDQA1とに相関がみられた。さらに、第VIII因子遺伝子ゲノタイプとインヒビター発現においても関連があることが判明した。
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