研究概要 |
本研究の目的は気道炎症、気道障害の一病態である気管支喘息において、上皮細胞特異的作用や臓器障害後の修復因子として注目される細胞増殖因子Keratinocyte Growth Factor(KGF),Hepatocyte Growth Factor(HGF)の作用およびステ口イドとの相互作用に関して、また、ARDSや喘息の治療への応用が試みられ、感染防御機能や抗炎症作用として注目されているサーファクタント関連蛋白(SP-A,B,C,D)との相互作用について検討を加えることにある。本年度は研究実施計画に基づき、喘息モデルラットの作製をヤケヒョウヒダニ虫体より部分精製したDer p II抗原を吸入感作と腹腔内投与することにより行った。吸入感作には抗原を一回0.3ml(蛋白量200ug)/生食2mlを6日間連日、週3回を3週間、さらに週1回を2ヶ月間吸入させた。腹腔内投与には抗原1.2ml(800ug)を完全Freund's Adjuvant同量とともに腹腔内注入し、1週後に1.2ml(800ug)を不完全Freund's Adjuvant同量とともに腹腔内注入、1週後同様の投与を行い、さらにその後1週毎に抗原のみ2ヶ月間投与した。免疫前後での好酸球数では吸入ラット2例中1例では2.0%から12.2%へ上昇していた。Dot blot法による解析では、ダニ特異的IgE抗体の反応は見られなかったが、腹腔内投与を行ったラット1例と吸入ラット2例中1例に特異的IgG抗体の反応が認められた。明かな臨床症状は示していないが感作されていることが示唆された。一方、培養胎児肺を用いた実験では、day14からの4日間培養において、デキサメサゾン(1-200nM)で濃度依存的に肺の発達を促進させた。至適濃度と考えられた100nMを作用させた培養肺では、培養3日目より効果が明かとなった。また、Nothern b1ot法による解析では、SP-A,B,C,CC-10(気道上皮クララ細胞分泌蛋白),KGF,KGF受容体(KGFR),HGF受容体(Met)の発現を促進させた。これまでの研究の結果も含め、肺の発達におけるステ口イドの作用は一部、KGFを介して肺に作用しているとも考えられ、来年度は成人ラット肺での作用について検討を加える。
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