本研究は目的は川崎病ではどのような機序で血小板が増加するのか明らかにすることである。トロンボポエチン(TPO)は血小板と巨核球の造血を調節する主要なサイトカインである、従来、炎症性疾患で見られる血小板増多はIL-6の産生増加に起因すると推定され、TPOの関与については否定的に考えられてきた。 平成10年度に得た結果は川崎病患児における血清TPO値は、血小板数が正常である発病第1週において有意に高値であった。血小板数が最高であった、発病第2から第3週においても血清TPO値は対象より高値または対象と同等であった。血清IL-6値は発病第1週に最高であり、IL-11とLIFは感度以下であった。soluble IL-6Rとsoluble c-kitには経過中に有意な変動は見られなかった。soluble gp130は回復期に高値になり、SCF値は急性期に低下した。以上の結果から、TPOはIL-6と共同して川崎病で見られる血小板数増加に寄与していると推測された。さらにTPOの産生は川崎病の急性期に増加している可能性が示唆された。平成11年度にはさらに、TPOはIL-6と共同して川崎病だけでなく感染症でも血小板数増加に寄与していると推測される結果を得た。また、TPOの産生は誘導され得るとの仮説について、動物実験を施行した。Northern hybridizationやcompetitive RT-PCRを用いて、肝や腎、骨髄でのTPOmRNAの発現の変動を検討したが、変動している証拠は見出されなかった。この点については方法論の改良も含めてさらに検討が必要である。 川崎病は日本で発見され、日本において多発している疾患であるため、その研究は我が国の重要な課題である。本研究結果は川崎病の病態解明の一助になったと思われる。さらには重症例の治療として、TPOはIL-6やTNFなどとともに、将来は坑炎症療法の標的として応用される可能性もあると思われる。
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