研究概要 |
Menkes病は、細胞内での銅の膜輸送障害により種々の障害を呈する疾患である。本症の治療法として非経口的銅投与と水・油の両方に親和性のある機レート薬との併用の有効性を検討した。【材料・方法】生後7日目に銅を皮下注射し、その後通常に飼育したmacularマウスを用いた。対照として、同腹の正常マウスを用いた。macularおよび正常マウスをそれぞれA,B,Cの3群に分け、生後4週目より、塩化銅の皮下注射およびキレート薬(ジエチルカルバミン酸ナトリウム)の経口投与を開始した。平成10年度は塩化銅は50μg/回、キレート薬は3mg/g体重/回の週2回投与を生後8週まで行った。平成11年度は塩化銅20μg/回、キレート薬は0.05mg/g体重/回と平成10年度に比べ、良剤とも量を減少して、週2回投与を生後8週まで行った。A群は銅、キレート薬投与群、B群は銅のみ投与群、Cは銅もキレート薬も投与しない群であった。生後8週目に解剖し、脳、肝臓、腎臓などを摘出し、銅濃度、チトクロームCオキシダーゼ活性を測定した。【結果・考察】macularマウスの体重増加は、3群とも差はなかった。コントロールマウスの体重増加は、未治療群で最も良く、併用療法群で最も悪かった。銅濃度に関しては、腎臓、小腸ではキレート薬と銅の併用投与でも、両マウスとも銅が過剰に蓄積する危険はないといえた。macularマウスの脳、肝臓では、キレート薬と銅の併用投与により、銅濃度が改善する傾向が見られた。しかしチロクロームCオキシダーゼ活性は銅とキレート薬の併用投与で、脳および肝臓とも低下した。これらの結果から、今回行った併用療法は組織での銅濃度は改善するが、銅は銅酵素に有効に供給されていないと思われた。今後、キレート薬の選択、投与量、投与方法などを検討する予定である。
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