研究概要 |
1. Wilson病症例における原因遺伝子の構造解析 Wilson病症例24例に対し,原因遺伝子ATP7B遺伝子の構造解析を行い,変異を同定した.日本人Wilson病症例におけるATP7B遺伝子変異の型と頻度は欧米人症例と明らかに異なっていた.点突然変異によるmissense mutationであるArg778Leu,1塩基欠失の2874delCおよび1塩基挿入2302insCが高い頻度にて認められた.本症の遺伝子診断を行う場合には,これらを含む9種類の変異,あるいは7つのエクソンを解析することにより,全alleleの約70%の変異が検出可能であると考えられた. 2. Menkes病およびWilson病における銅特異的ATPase活性の測定 古典的Menkes病症例1例とその母親(保因者)およびWilson病症例5例に対し銅特異的ATPaseの活性測定を行った.上記した対象症例の培養リンパ球のcell membraneにおいて,銅負荷により上昇するATPase活性をATPの酸化的リン酸化の変化により測定した.その結果,古典的Menkes病症例の培養リンパ球における銅投与によるATPase活性の上昇はコントロールの30%程度,本症保因者は約50%であった.Wilson病症例においては,コントロールの45-60%程度であった.先天性銅代謝異常症とその保因者の培養リンパ球において,銅特異的ATPase活性は低下しており,本法によりATP7Aあるいは7B蛋白の機能を解析することが可能であると考えられた.銅刺激による活性上昇の程度がMenkes病症例にて正常の約30%程度,Wilson病症例にて45-60%であったことより,リンパ球における銅代謝にはATP7A蛋白がより強く機能していると推察された.
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