研究概要 |
1.Wilson病における遺伝子変異と臨床症状との関連 臨床病型が明らかなWilson病症例20例に対し,遺伝子構造解析を行い,遺伝子変異と発現している臨床症状との関連について検討を行った.その結果,1塩基欠失を両方のaleleに有する症例は,劇症肝炎型症例あるいは肝障害の進行が早い症例であった.また,R778L変異をtomozyogoteに有している発症後症例は,全例神経型症例であった.これらの結果より,遺伝子変異の型は,発現する臨床症状を決定する上において重要な役割を担っていると考えられた. 2.Menkes病の遺伝子解析 古典的Menkes病症例2例に対して,ATP7A遺伝子の構造解析を行った.その結果,1例はexonskipping(2317+5gtoc)が,もう1例には1塩基挿入(2491insA)が認められた.特に1塩基挿入は今までに報告のない変異であり,また患者の母親に対する解析の結果,突然変異により生じた新しい変異であることが確認された. 3.Wilson病における遺伝子変異とATP7B活性との関連 遺伝子変異が明らかなWilson病患者のリンパ球を培養し,銅特異的ATPase活性を測定した.その結果,R778L変異をhomozyogoteに有する症例の活性が他の変異を有する症例に比べ低い値を示していた.この結果より,778番目のアミノ酸あるいはこのアミノ酸が存在する5番目の膜透過部位はATP7B蛋白の構造あるいは機能上重要な部位であることが推察された.
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