研究概要 |
心筋細胞培養および交感神経節との混合培養細胞にDaunorubicinを1μmolの濃度で添加し、TUNEL法によりapoptosisの陽性率を、またアガロースゲル電気泳動法にてDNAのladderingを確認した。TUNEL陽性細胞は交感神経支配を受けた心筋細胞に比し、交感神経支配を受けていない心筋細胞で有意に高い確率で認められた。一方、Daunorubicinの投与を受けていない群では、有意差は無く、apoptosisの出現も軽微であった。なお、TUNEL陽性細胞はDaunorubicin負荷後8時間ころより観察され、24時間がピークであった。しかし、交感神経支配の有無とTUNEL陽性細胞出現時間には差異は認められなかった。さらに、apoptosisの誘導機構に関与するとされているp53, Baxの発現を同じ培養細胞を用いて、経時的に検討した。その結果、Daunorubicin添加後約90分より、p53およびBaxともに両培養細胞でそれぞれup regulationが認められたが、両培養細胞間には有意差は認められなかった。一方、Daunorubicinを添加していない培養心筋細胞および混合培養細胞ではそれぞれのup regulationは認められなかった。また、apoptosisの実行過程に関与するとされているCaspase 3の発現を検討した。Caspase 3の発現はDaunorubicin添加後120分で両培養細胞において発現の亢進が認められた。さらに、その程度は交感神経支配を受けた心筋細胞に比し、有意に交感神経支配を受けていない心筋細胞で高かった。以上より、Anthracyclinによる心筋細胞障害としてapoptosisが関与していること、および交感神経支配によりその程度が減弱されることが解明された。さらにapoptosisが発現する機序に、p53、Baxの関与は少なく、実行過程にはCaspase3が深く関わっていることが示唆された。
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