平成10年度における本研究の目的はヒト心筋細胞ATP感受性Kチャネルの電気生理学的特性をパッチクランプ法を用いて検討することであった。これまでの研究成果は以下の如くである。 1. ヒトの心房筋より安定した単一細胞を分離することが可能になった。(ヒト心筋単一細胞の分離) 2. 動物実験で新しく開発されたカルシウム感受性増強剤、levosimendan、にはATP感受性Kチャネル電流増強作用があることが報告されている。そこで、本研究ではこの薬剤を用いてATP感受性Kチャネル電流特性につき検討した。levosimendanにより外向き電流が増強され、この電流はglibenclamideにより完全に抑制された。また、levosimendanにより誘発された外向き電流の平衡電流はK電流のそれの近傍であった。以上より、ヒト心筋細胞にはlevosimendanにより誘発されるATP感受性Kチャネル電流が存在するすることが確認された。(ヒト心房筋細胞におけるATP感受性Kチャネルの存在の証明) 3. ATP感受性K電流の誘発は1μMでは誘発されず、10μMで誘発された。(濃度依存性の存在) 平成10年度の研究で明らかにされたことは以上である。次年度はATP感受性Kチャネルの単一チャネル電流についても研究を進める。さらに、Ievosimendanにはフォスフォジエステラーゼ抑制作用も有することが報告されており、これについても研究を進め論文としてまとめる予定である。
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