研究概要 |
骨髄異形成症候群の病因は依然不明であるがその病像は前白血病状態であると考えられている。本研究では骨髄異形成症候群から白血化する過程における造血細胞の細胞増殖分化機構の破綻の機序を造血因子による細胞周期調節の観点から明らかにする事を目的とした。骨髄異形成症候群の白血病化のモデルとして骨髄異形成症候群由来の白血病細胞株SKM-1を用い、造血因子(GM-CSF)および造血抑制因子(TGFβ)を使ってGl期での細胞周期調節を分子レベルで解析した。 (1)SKM-1細胞増殖におよぼすTGF-CSFの影響:SKM-1細胞は造血因子の非存在下で増殖するとともにGM-CSF(20ng/ml)により軽度の増殖促進が観察された。一方、SKM-1細胞はTGF-βにより培養2日目より濃度依存性に細胞増殖が抑制され、その抑制効果はTGF-β 25ng/mlで最大に達した。しかし、このSKM-1細胞に対するTGF-βの抑制効果はGM-CSF(20ng/ml)を同時に存在することにより全く認められなくなった。 つまり、SKM-1細胞において正の造血因子(GM-CSF)と負の造血因子(TGF-β)の相互作用が観察された。 (2)Propidium Iodide (PI)法による細胞臭気の解析:SKM-1細胞はTGF-βの添加によりGl休止することが明らかとなった。さらに、GM-CSFを同時添加することによりTGF-βの存在下でもSKM-1細胞のG1休止は認められなかった。従って、GM-CSFによるTGF-βのSKM-1細胞に対する増殖抑制の解除はGM-CSFがTGF-βのG1休止作用を抑制することによるものと考えられた。 (3)細胞臭気関連遺伝 TGF-β1はSKM-1細胞のcyclin D1,D3.cdk2遺伝子の発現に影響は与えないが、cyclin D2,cdk4,6遺伝子の発現を抑制した。即ち、cyclin D2,cdk4,6遺伝子のdown regulationが、TGF-β1の細胞周期のG1期停止作用に関与している可能性が示唆された。しかしながらTGF-β1存在下で抑制されたcdk4遺伝子は、GM-CSFを同時に加えてもその遺伝子発現は抑制されたままであり、GM-CSFによるG1期停止作用解除には関与していないものと考えられた。
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