研究概要 |
骨髄異形成症候群は小児では稀な難治性の血液疾患でしばしば白血化することが知られておりその病像は前白血病状態であると考えられている。本研究では骨髄異形成症候群から白血化する過程における造血細胞の細胞増殖分化機構の破綻の機序を造血因子による細胞周期調節の観点から明らかにする事を目的とした。骨髄異形成症候群由来の白血病細胞株SKM-1を用い、造血因子(GM-CSF)および造血抑制因子(TGFβ)を使ってG1期での細胞周期調節を分子レベルで解析した。その結果、SKM-1細胞は造血因子の非存在下で増殖するとともにGM-CSF(20ng/ml)により軽度の増殖促進が観察された。一方、SKM-1細胞はTGF-βにより培養2日目より濃度依存性に細胞増殖が抑制されたが、TGF-βの存在下でもGM-CSFを同時添加することによりSKM-1細胞のG1休止は認められなかった。さらに、SKM-1細胞において、TGF-β1はcyclin D1, D3, cdk2遺伝子の発現に影響は与えないが、cyclin D2, cdk4, 6遺伝子の発現を抑制した。即ち、cyclin D2, cdk4, 6遺伝子のdown regulationが、TGF-β1の細胞周期のG1期停止作用に関与している可能性が示唆された。しかしながらTGF-β1存在下で抑制されたcdk4遺伝子は、GM-CSFを同時に加えてもその遺伝子発現は抑制されたままであり、GM-CSFによるG1期停止作用解除には関与していないものと考えられた。 このことは骨髄異形成症候群からの白血化に際してcyclin D2, cdk 6遺伝子による細胞周期の活性化機構が何らかの役割を演じているものと推察された。
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