水痘ワクチン接種後、特異細胞性免疫や抗体が陽性化しても、約20%に軽症ではあるが再感染することが明らかになっている。しかし、その原因については不明である。私どもは、水痘ワクチン接種は自然感染と異なる経路で感染することや接種後ウイルス血症が少ないことなどから、分泌型IgA抗体(sIgA)分泌が誘導されるNALTへの抗原刺激が少なく、ウイルス侵入部位で第一に働くsIgAが低いためではないかと推論した。水痘感染約3カ月後に唾液を採取した自然感染群26名と水痘ワクチン接種群28名、少なくとも水痘感染後2年以上経過した群23名、小児悪性疾患寛解中の群23名、60歳以上の高齢者群20名、小児科で働く医療従事者の群14名、抗体が陰性である陰性コントロールの群11名を対象に、唾液中の水痘帯状庖疹ウイルス(VZV)特異sIgA抗体をELISA法で測定した。ワクチン群が自然感染群に比較して有意に(P=0.0085)低値で、2例はcut一off値以下であった。高齢者の群は低くなく、帯状庖疹を既往歴に持つ人はない人に比べて高い傾向にあった。医療従事者の群は最も高く、有意にほかの群より高値であった。水痘ワクチン接種後は、自然感染後に比べ有意に唾液中のVZV特異sIgA抗体は少なかった。しかし、帯状庖疹のリスクの高い悪性疾患患者や高齢者では、sIgAは低くなく、帯状庖疹の既往のある人ではかえって高値であった。これは細胞性免疫は低いために帯状庖疹になってもsIgAが保たれているため、水痘の再感染は非常に稀であることを反映していると思われた。sIgAが保たれる原因として外因性あるいは再活性化した内因性VZVによるものと考えられた。
|