研究概要 |
MELAS(mitochondorial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis andstroke like episode)は、小児期に起る脳卒中発作を特徴とするミトコンドリアDNA異常症である。患者では、脳および冠動脈など全身の中小動脈平滑筋層および血管内皮細胞に異常ミトコンドリアの増生に起因するangiopathyの存在が病理学的に報告されている。しかしながら、本症における卒中発作の成因は未だ不明である。われわれは、多彩な症状を呈する本症の血管障害の病態を解明するため、遺伝的素因としてのnitric oxide synthetase(NOS)遺伝子の多型を重症度のことなる患者で検索するとともに、卒中発作におけるより効果的な治療法を開発する目的で、種々の血管作動性物質に対する血管内皮機能を検討した。臨床的にMELASと診断した2例のミトコンドリアDNA分析を行った所、1例はA3243Gの点変異を、1例は既存の変異を認めなかった。これらの症例において上腕内側に存在する動脈を最高と最低血圧の中間圧で5分間血流充満し、その負荷前後の内径を高解像度エコーで計測した。同時に年齢、性別をマッチさせたコントロールも同様に計測した。その結果、これら患者では、血流充満に対する血管内皮機能がコントロールの10%および30%と著名に低下しており、極めて高度の血管内皮機能の障害が証明された。現在、これら患者を含む多くのMELAS症例での、NOS遺伝子変異を解析中である。
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