研究概要 |
Rett症候群〔以下RSと略す)は生後6カ月までは正常発達を示し,1歳前後より自閉傾向,精神経運動発達遅滞を示す発達障害である。RSは臨床症状,剖検所見よりド-パミンニューロン系の異常がその病態,病因に関わっていると考えられている。髄液のphenylethylamine(以下PEAと略す)はDopamineの前駆物質であるphenylalanineの脱炭酸化により合成され,神経修飾因子として働くことが知られている。昨年髄液中PEAの定量をGas chromatography/Mass spectrometryを用いて確立した。本年は髄液中のPEAをRSで測定し,biological markerとなり得るか検討した。またドーパミン系の別のマーカーであるhomovanilic acid(HVA)と3-methoxy-4-hydroxy-phenylethylene glycol(MHPG)も脳脊髄液で測定したが,RSとコントロール,disease controlで有意差はなかった。16人のRSと13人の年齢をマッチしたコントロール,4人の精神遅滞を伴ったてんかん,5人の精神遅滞を伴った自閉症をdisease controlとし,髄液中のPEAを測定した。髄液中のPEAはそれぞれ287.2±285.9,936.2±519.1,612.2±221.1,570.6±441.6pg/mlでRSでコントロールの32%と有意に低値であった。(p<0.001)。また精神遅滞を伴ったてんかん,自閉症ではコントロールと差はなかった。PEAは自傷行為,呼吸傷害などの臨床症状とは関連は認めなかった。PEAはRSでドーパミン障害のマーカーとなる可能性が考えられた。
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