本研究では、小児および成人において慢性腎不全の原因として重要な逆流性腎症発症のメカニズムを研究している。これまで、まず、カラードプラーエコーを用いた膀胱尿管逆流現象の診断を試みてきた。膀胱尿管現象のIV度およびV度の患者では、膀胱から尿管への尿の逆流をカラードプラーエコーで直接シグナルとして捉えることができた。しかし、膀胱尿管逆流II度およびIII度では、小児の場合、尿管が細く膀胱尿管移行部の描出が難しいことより、腎孟尿管移行部での尿の逆流をカラードプラーにて捉えることでVURの診断を可能とした。 一方、尿の腎実質内逆流に関しては、現在10症例において検討中である。膀胱内にRI標識したDTPAを注入することで、尿の膀胱尿管逆流を有する患者において、乳児から成人にわたって、尿の腎実質内への逆流が検出できることを検証している。これらの症例に対して、DMSA、経静脈性腎孟造影、コンピューター断層撮影を施行し形態的に腎臓の瘢痕化の診断を行い、尿の腎内逆流と腎瘢痕化の関連性の検討を行った。 これまで得られた結果では、興味深いことに、(1)VURの程度が重症な症例ほど、尿の野内逆流が検出される、(2)尿の腎内逆流を認めた症例においてのみ腎瘢痕化すなわち逆流性腎症発症を認めている、などが判明し、尿の実質内逆流が逆流性腎症の発症に強く関わっていることが示唆されている。また、尿の腎内逆流を認めた症例に関しては、各腎臓において、尿の腎内逆流を認める部位において腎臓の瘢痕化を高頻度に認めており、尿の腎内逆流と腎臓の関係に加えて、その局所でも相関があると考えられた。
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