研究概要 |
皮膚線維症は真皮のI型コラーゲンの過剰な沈着をその病変の特徴としている.そのメカニズムはI型コラーゲンの過剰産生が重要で、既に強皮症などでそれが真皮線維芽細胞におけるI型コラーゲン違伝子の転写の亢進によることが明らかにされた.I型コラーゲンは2本のα1(I)鎖と1本のα2(I)鎖より成り、それぞれの遺伝子のプロモーター遺伝子における調節配列及びそれを認識して結合する調節因子がRNAポリメラーゼIIと相互に作用してその発現が制御されている.これまでに転写を制御する因子としてCCAAT結合因子,Nuclear Factor I, ColF1が明らかにされた。ColF1は解析の結果、42kDaおよび40.5kDaの2本のポリペプチドより構成され、42kDaはc-myc上流遺伝子結合蛋白質Purαで40.5kDaはそのファミリーpurβであることがわかった。さらに我々はよりヒトの皮膚線維化のメカニズムを理解するためにヒトI型コラーゲン遺伝子転写レベルをヒト真皮より初代培養し得た線維芽細胞で種々の条件下で解析している。すなわち直接皮膚の線維化あるいはコラーゲンに異常をきたす疾患の培養線維芽細胞でI型コラーゲン遺伝子発現量を解析し、それぞれの疾患でその異常発現をきたすものを明らかにしてきた。I型コラーゲンのみならず、真皮のもう一つの主な成分であるIII型コラーゲンについても検討した結果、III型コラーゲンの発現異常をきたすEhlers-Danlos症候群の2例を明らかにした。また関連分子であるエラスチンの発現異常をきたすCostello症候群の1例を明らかにした。一方、コラーゲンの過剰な沈着をきたすメカニズムとしてその分解系の挙動も重要であるが、cutis laxa線維芽細胞において、その遺伝子プロモーター領域にTPA-responsive elementを有するMMP-1、MMP-3、MMP-9の遺伝子発現が上昇し、またそれを有しないMMP-2では不変であることを証明した。
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