研究概要 |
マウスにおける接触過敏症誘導でのIL-4IL-13などのTh2サイトカインの役割はまだ明らかにされていない。今回、IL-4,IL-13シグナル伝達に必要なSTAT6欠損マウスを用いて接触過敏症におけるIL-4,IL-13の役割を検討した。マウス接触過敏症にSTAT6シグナルが関与するかどうかを明らかにするため種々のハプテンを用いてSTAT6欠損マウスに経皮感作した後耳介に惹起した。TNCB,Oxaでは全体的に耳介腫脹反応が減弱し72時間後をピークとする反応が認められた。DNFBではSTAT6欠損マウスでは耳介腫脹反応は非常に減弱していた。このことにより、接触過敏症ではハプテンにかかわらずSTAT6シグナルが必要であることがわかった。さらに、クロトン油による刺激皮膚反応、羊赤血球を用いた遅延型反応(DTH)も検討したが、両者タイプの間に有意差は見られなかった。このことにより刺激皮膚反応、DTHではSTAT6シグナルは必要ないと考えられた。 以上、接触過敏症の誘導にのみSTAT6が重要な役割を果たし、刺激反応、DTHでは関与しないことが明らかにされたが、そのメカニズムをTNCBによる接触過敏症で検討した。まず、TNCBで感作したマウスを惹起後の耳介部の皮膚反応を病理組織学的に検討した。ワイルドタイプ(WT)マウスでは惹起部の皮膚は著明な浮腫とリンパ球、好酸球、好中球の浸潤を、認めたが、STAT6欠損マウスでは浮腫性の変化は乏しく特に好中球、好酸球の浸潤が減弱していた。また、TNCBで経皮感作後5日目に惹起したマウスの血清中の免疫グロブリンを検索したところ、STAT6欠損マウスではIgG1,IgEの産生が認められなかった。さらに、TNCBで惹起した耳介部位の皮膚を切除し抽出液中のサイトカインの動態を検討したところ、STAT6欠損マウスではIL-4,IL5が検出できなかったが、WTマウスでは検討できた。これらの結果より、接触過敏症誘導にSTAT6シグナル伝達によるTh2サイトカインが重要な役割を果たす可能性が考えられた。来年度は、さらにSTAT6が接触過敏症の感作誘導に重要な役割を果たすのか、惹起において重要な役割を果たすのか、受動転嫁実験にて検討してゆく予定である。
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