苔癬状粃糠疹は一般には炎症性皮膚疾患と考えられている。しかし皮膚リンパ腫合併例や皮膚の浸潤細胞中の単クローン性集団の存在などから本症をリンパ増殖性疾患と捉え、悪性側の一端が皮膚T細胞リンパ腫である連続スペクトルの良性側の一端をなすという考えもある。この皮膚T細胞リンパ腫の腫瘍細胞はCD4陽性T細胞あるいはhelper/inducerのT細胞なので、前述の仮説が成立するには苔癬状粃糠疹中で検出される単クローン性集団が皮膚T細胞白血病の腫瘍細胞と同一の表面マーカを有していなければならない。 本研究では、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹6例と慢性苔癬状粃糠疹1例、合計7例の保管パラフィンブロックを研究材料に使用した。 1.再構成TCRγ遺伝子をPCRで増幅することにより、7例中の6例で単クローン性の細胞集団を認めた。 2.増幅されたバンドの塩基配列を決定し、それらが正しく再構成TCRγ遺伝子であることを確認し、再構成に用いられた遺伝子セグメントを決定した。 3.増幅されたバンドを標識してプローブとし、2枚の連続切片でミラー切片を作成し、片方にインサイツハイブリダイゼーション、もう片方にUCHL1抗体、抗CD8抗体、抗CD4抗体による免疫組織化学染色を施行し、両者を比較した。これら単クローン性細胞(インサイツハイブリダイゼーション陽性細胞)はUCHL1陽性、CD8陰性、CD4陽性のT細胞であった。 これらの結果は、本疾患が類乾癬の疾患群を構成する一員としての資格を有していることを証明している。また、単クローン性のCD4陽性T細胞とこれに対する宿主反応としての反応性CD8陽性T細胞との相互作用が、この連続スペクトルの中の疾患のそれぞれの生物学的態度を決定しているという仮説が生み出された。
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