表皮細胞に感染した単純ヘルペスウイルスに対する免疫応答が修飾あるいは抑制されることにより、皮膚における単純ヘルペスウイルス感染症の病変が誘発される、あるいは重症化すると考えられる。今年度は前年度に得られた結果をふまえて、さらにこれらの現象の背景に存在する因子を明らかにする目的で、以下の項目について検討した。 1・カポジ水痘様発疹症で受診した患者について臨床的事項を検討したところ、カポジ水痘様発疹症は、アトピー性皮膚炎が重症で血清IgE値の高い症例に発症しやすいことを明らかにした。結果の一部を日本臨床皮膚科医学会雑誌に発表した。 2・BALB/cマウスにハプテンの連続塗布を行って作成した慢性接触過敏症による皮膚炎部位に単純ヘルペスウイルスを感染させる実験によって、湿疹病変を有する部位に接種した場合、皮膚病変が重症化することを見い出した。くわえて上記の実験系においては、単純ヘルペスウイルスに対する細胞性免疫反応は健常マウスや急性の接触過敏症を有するマウスと比較して有意の変化がみられなかった。これらの結果については第47回日本ウイルス学会において発表した。 3・表皮内へのヒト乳頭腫ウイルス感染が一つの誘因となっている外陰部ボーエン病では、表皮内ランゲルハンス細胞と免疫細胞の浸潤の性質が腫瘍細胞の増殖活性に相関して変化していることが判明した。結果は原著としてJ.Dermatol.Sci.に発表した。
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