ヒト乳頭腫ウイルスの型特異的細胞変性効果に関する分子病理学的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670796
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 江川 清文 熊本大学, 医学部, 講師 (50183215)
• 研究分担者: 小野 友道 熊本大学, 医学部, 教授 (10040586) ; 本田 由美 熊本大学, 医学部, 助手 (00284761)
• キーワード: ヒトパピローマウイルス / HPV / 型特異的細胞変性効果 / 細胞質内封入体 / 封入体疣贅 / 表皮様嚢腫 / HPVE4 / メラニン

研究概要

従来のヒト乳頭腫ウイルス(HPV)1型関連、および我々の発見したHPV4/60/65型とHPV63型関連封入体疣贅をモデルにHPV型特異的細胞変性効果のメカニズムについて検討した。HPV型特異的臨床・病理所見について、HPV各遺伝子との関連やケラチンの異常、色素異常について組織学的、免疫組織学的、電顕的および分子生物学的検討を加えた。また、HPV型特異的嚢腫形成ついても検討を加えた。
本年度の研究において、従来我々が新HPV感染症として提唱してきた黒色調疣贅がHPV4/60/65型感染症であること、黒色調の原因がメラニン色素の増加とこれらのHPv型特異的に出現する均質無構造細胞質内封入体に伴う現象であることを明らかにした。臨床像と原因ウイルスおよび病理組織学的所見との特異相関が明らかになったことより、この疣贅を″色素性症贅(Pigmented warts)″と命名して他の疣贅より区別した。また、HPV60型感染疣贅の色素沈着の有無について異なる報告があるが、我々はHPV型以外の因子で色素沈着の有無が決定される可能性を明らかにした。
免疫組織学的および電顕的検討によりHPV型特異的細胞質内封入体と各HPV型のE4遺伝子蛋白とトノフィブリル、デスモゾーム等細胞側因子との関連を示唆する所見が得られ、次年度の研究において免疫電顕的検討を加える予定である。
HPV関連表皮様嚢腫については、従来HPV60型が唯一嚢腫と関連するとされていたが、我々は新たにHPV57型の新亜型の検出に成功しHPV57cと命名した。HPV関連嚢腫の病理組織像・発症病理についてもHPV型特異的細胞変性効果の概念に基づいた検討が必要であることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] EGAWA K.: "A case of a human papillomavirus 60-induced wart eith clinical appearance of both pigmented and ridged warts." Dermatology. 197・3. 268-270 (1998)
• [文献書誌] KITASATO H.: "A case of a human papillomavirus 60-induced wart eith clinical appearance of both pigmented and ridged warts. Putative human papillomavirus type 57 new subtype isolated fromplantar epidermoid cyst without intracytoplasmic inclusion bodies." Journal of General Virology. 79・5. 1977-1981 (1998)
• [文献書誌] EGAWA K.: "Human papillomavirus 57 identified in a plantar epidermoid cyst." British Journal of Dermatology. 138・3. 510-514 (1998)
• [文献書誌] EGAWA K.: "The glycoprotein of the carcinoembryonic antigen(CEA) gene family expresed on epithelial keratinocytes in viral warts." Archive of Dermatological Reserch. 290・8. 453-457 (1998)
• [文献書誌] EGAWA K.: "Immunohistochemical demonstration of carcinoembryonic artigen(CEA) and related antigens in various keratinous neoplasms and verruca vulgaris." British Journal of Dermatology. 139・2. 178-185 (1998)
• [文献書誌] EGAWA K.: "Pigmented viral warts : aclinical and histopathological study including numan papillomavirus typing." British Journal of Dermatology. 138・3. 381-389 (1998)
• [文献書誌] 江川 清文: "皮膚科診療プラクティス1.感染症治療戦略" 文光堂(東京), 299 (1998)
• [文献書誌] 江川 清文: "皮膚病疾患最新の治療1999-2000" 南江堂(東京), 265 (1999)