まず、自験58症例を臨床・病理組織・免疫組織化学・分子生物学的に検討することで皮膚型ATLの診断基準を明らかにした。すなわち、紅斑浸潤局面、多発性丘疹、小結節、または腫瘤の何れかの限局性腫瘍性皮膚病変で初発し、前3病変は間もなく全身性となった。しかし4病変とも白血病状態やリンどく節腫大は伴わず、年余にわたって皮膚病変のみで経過した。病理組織・免疫組織化学的検討によると、前2病変では表皮内〜真皮乳頭層で、後2病変では真皮全層〜皮下組織で腫瘍細胞が増殖していた。HTLV-1provirusの単クローン性組み込みは、皮膚病変では100%に確認されたが、末梢血リンパ球(PBL)では前2病変で28/33(85%)に、後2者で3/28(88%)に確認され、皮膚病変に比べ全体的にバンドが薄かった。観察期間10年とし、Kaplan-Meier法にて予後を検討し、前2病変を有する患者の50%生存率は6.5年で、明らかな腫瘍性病変を示さないくすぶり型に比べ有意に不良であった。後2病変を有する患者の50%生存率は2.0年でリンパ腫型と類似であった。以上より、皮膚型を臨床亜型として独立させる意義は認められ、病理組織学的に確認される皮膚の腫瘍性病.変を年余にわたって有し、皮膚病変でHTLV-1のproviruSの単クローン性組み込みが証明されることを、本病型の診断基準とした。ちなみに本病型患者は自験のATL患者の約半数を占めた。前2病変を有するものにγ interferonを、後2病変を呈するものにはCHOP療法を基本とした他剤併用化学療法を施行した。今後症例数を増やし、CR率・予後を従来の治療と比較検討する予定である。皮膚で増殖しているATL細胞の動態に関しては、免疫組織化学的に強い増殖とcell lossが観察され、全症例で解析を始めた。ATLの病初期病変から取り出した細胞を増殖させる因子の培養系又はヌードマウスを用いた検討は現在進行中である。
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