研究概要 |
前年度(平成10年度)に引き続き,紫外線による表皮細胞への影響について検討してきた.正常ヒトケラチノサイトを培養し,紫外線(UVB=30mJ/cm^2,UVA=10kJ/m^2の両者を同時または単独で)を照射して,培養液中に産生放出されたサイトカインの測定と,mRNAレベルを検討した.その結果,ヒト正常ケラチノサイトにおいて,長波長紫外線と中波長紫外線は炎症惹起に働くサイトカイン(IL-1α,IL-6,IL-8)を相加的に誘導するが,免疫抑制性サイトカイン(IL-10,IL-12,TNF-α)の誘導に関しては差異のあること,したがって,免疫に及ぼす影響にも差異の認められ可能性のあることについて明らかにした(Jpn Inflamm,1999,in press).さらに紫外線照射により,ケラチノサイトの増殖および炎症・免疫に関与するサイトカインの特異的レセプターの発現が抑制されることについても明らかにした(J Invest Dermatol 112:656,1999;J Cell Physiol,182,2000,in press).具体的にはケモカインレセプターの一つであるCXCR-2の皮膚ケラチノサイトでの発現は紫外線照射によりその発現が著明に抑制されるが,同様の処理にて,CXCR-1の発現は変化しないことを確認した.ケモカインはケラチノサイトの増殖,分化のみならず,炎症細胞の浸潤動態を調節することにより皮膚のサイトカイン環境に影響している.すなわち,紫外線には生体の恒常性の維持に必要な因子を調節し,自己防衛能力を亢進させる作用のあることについても明かにした(J Invest Dermatol Sym Proc,4(2):177,1999;J Dermatol Sci,2000,in press).
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