研究概要 |
紫外線主に長波長紫外線(UVA)による表皮細胞への影響について検討して来た.中波長紫外線(UVB)の表皮細胞および生体に及ぼす影響についての知見は多いが,UVAの影響に関する知見は少ない. 正常ケラチノサイトを培養し,紫外線(UVA=0〜20kJ/m^2)を照射して,炎症性サイトカインの発現についてmRNAレベルと培養上清中に放出される蛋白量について検討した.その結果,IL-12の産生亢進を認め,IL-10の上昇は認められなかった.またUVAはUVBで誘導のかかるIL-6,IL-8,TNF-α,TGF-β1,GM-CSF,PGE_2のうち,IL-6,IL-8,PGE_2の上昇のみを惹起し,TNF-α,TGF-β1,GM-CSFは誘導しなかった.すなわち,UVAはUVBによって惹起される炎症反応を増強することが示された. 一方紫外線照射後の表皮細胞のアポトーシスに関与しているとされているNGFはUVBで産生抑制がかかるが,UVAでは影響を認めなかった.具体的にはNGFのmRNAレベルと培養液中に放出されたNGF蛋白について検討した.その結果UVA照射24時間後では今回の照射量ではNGFのmRNAレベルの低下は認められず,12時間後にはむしろmRNAレベルの上昇を認めた.しかし培養上清中のNGF蛋白レベルには有意の変動を認めなかった.現在引き続き,感度を高めて検討中である. UVAがUVBによって惹起される免疫抑制に対して拮抗的に作用していることについて,表皮細胞由来のIL-10,IL-12産生に及ぼす影響についての検討から明らかにしてきた.表皮細胞由来NGFに対するUVAの影響もUVBによるものに拮抗的に作用している可能性があり,今後さらにUVA照射量を変動させ,またUVBとの混合照射などにより検討を進めて行く予定である.
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