研究概要 |
難治性皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎、強皮症および菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)に対しての紫外線療法、特に長波長紫外線(340-400nm,UVA1)の治療に結びつくことに有用な基礎的、臨床的研究を行うのが本研究の目的である。これらの皮膚疾患はいずれも真皮を主病変とした疾患であり、UVAは真皮深層まで届く点が利点であり、病変部にその作用が及ぶ。本年度は、基礎的研究を中心として、角化細胞、T細胞、線維芽細胞に関してUVAの作用を検討した。UVAがクローン化および新鮮血から分離したT紬胞(CD4+T cell)に量依存的にアポトーシスを起こすことこと、それはUVB(290-320nm)とは違いかなり早い照射後4時間で起こることが明らかとなった。この機序は、UVAによって誘導されるFAS LとT細胞上でのアポトーシス誘導分子であるFASとが同一細胞もしくは隣同士の細胞で結合しアポトーシスが誘導されることが明らかとなった。一方、UVAでは線維芽細胞、角化細胞ともT細胞に比ベアポトーシスは起こり難いことが明らかとなり、むしろ角化細胞ではsFASLが産生され、それによってT細胞がアポトーシスを起こすこと、paracrineの機序が示唆された。また線維芽細胞では、UVA照射によってそれ自体のアポトーシスは起こらず、collagenの産生が抑制され、metalloproteinase(MMP)-1,3の産生が上昇し、matrix proteinが壊れていく方向に行くことも明らかとなった。次年時では、これらの結果をもとに強皮症における線維芽細胞、アトピー性皮膚炎の活性化T細胞、皮膚T細胞リンパ腫細胞に焦点を当て基礎的、臨床的研究を行う予定である。
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