平成10年および11年の研究によって、ヒト培養melanocyteは細胞播種後活発な細胞運動(播種後9時間にピーク)することが判明した.また、endothelin-1(0〜10^<-8>mol)の存在によって、melanocyteの細胞運動能は濃度依存性に低下した.さらに、蛍光抗体法による観察で、細胞運動能情報伝達蛋白であるp125FAKはmelanocyteの細胞辺縁にplaqueを形成して認められ、plaque数は濃度依存性に減少することを明らかにした.平成12年度には、endothelin-1の存在下でのmelanocyteのPCRでのp125FAKの表出量の確認を再度行った.その結果、p125FAKRNAの表出量はendothelin-1の存在により濃度に関係なく一様に低下することが明らかになった.一方、樹枝状突起の総長、数、樹枝状な細胞形態の細胞割合はともにendothelin-1の濃度依存性に増加した.以上の結果は、endothelin-1はmelanocyteの細胞形態、メラニン産生などの細胞分化を促進するが、細胞移動能や細胞増殖は抑制すること考えられた.これらの結果は、尋常性白斑、創傷治癒後の脱色素斑の治療や皮膚の美白機序に関する重要な示唆を与える.melanocyteのメラニン分泌に関する報告は多いが、細胞運動能の制御に関する報告は少ない 今後さらに紫外線照射やmelanocyte stimmulation hormonなどがmelanocyteの細胞運動にいかに影響するか研究する必要がある.
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