我々は既にハプテンの繰り返し塗布によりアトピー性皮膚炎類似の病態を呈するマウスモデルを樹立している。本研究ではハプテンの種類、マウスの系統を変えることにより様々なタイプの免疫反応を惹起し、heterogeneityに富むアトピー性皮膚炎の病態を反映するモデルを確立したいと考えた。 1.OXをハプテンとして用いてBALB/c、C57BL/6の両系統マウスの耳翼腫脹反応を経時的に比較検討した。両系統のマウスとも、ハプテン塗布を繰り返すにつれ、ハプテン特異的腫脹反応は遅延型からearly-typeのlate phase reactionにシフトした。しかしBALB/cでは塗布30分後にピークとなる即時型反応を著明に認めたのに対し、C57BL/6では殆ど認めなかった。 2.急性期と慢性期の各々のマウスにOX塗布後、経時的に皮膚及び所属リンパ節を採取し、サイトカイン産生パターンをRT-PCRにより検討した。BALB/cではTNCBを用いた場合と異なり、急性期においてもT_H1に加えT_H2サイトカインの産生を認めた。慢性化につれてT_H2優位となった点ではTNCBの場合と同様であった。それに対し、C57BL/6では急性期にはT_H1優位であり、慢性化に伴いT_H2へのシフトが認められた。 3.次いで、同様の方法で得られた材料を用いてELISA法で蛋白レベルでのサイトカインレベルの変動をIFN-γ、IL-4、IL-10について検討した。結果はマウスの系統に関係なく慢性化に伴いT_H2(IL-4、IL-10)反応が優位となった。また慢性期に産生されるサイトカインのT_H1/T_H2比も系統差に関係なく比較的一定に保たれていた。 以上より接触皮膚炎の慢性化に伴うT_H2反応のシフトは、マウスの系統差を超えて共通して認められる現象であり、それは細胞障害性のつよいT_H1反応を緩和するための恒常性の維持に関与する合目的的な反応と考えられた。
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