皮膚癌病変部検体(日光角化症5例、ボーエン病5例、基底細胞癌5例、有棘細胞癌3例)について、ヘマトキシリン・エオジン染色による形態学的アポトーシス細胞の検索、TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出、PCNAの免疫染色による増殖活性の測定を行い、比較検討した。日光角化症では、顆粒層から有棘層上層の一部の細胞がTUNEL法陽性で、有棘層下層から基底層の一部の細胞がPCNA陽性となる傾向が認められた。萎縮型では、TUNEL法、PCNAとも陽性細胞は非常に少ないのに対し、肥厚型、Bowenoid型では、PCNA陽性細胞が多数検出された。特にBowenoid型では、PCNAVA性細胞は全層にわたり、上皮上層に多数のTUNEL法陽性細胞を認めた。ボーエン病でも同様の傾向が認められたが、特に上皮上層で細胞異型の強い症例でより多くのTUNEL法陽性細胞が検出された。基底細胞癌では腫瘍細胞巣の辺縁がPCNA陽性の場合は胞巣中央の一部の細胞がTUNEL法陽性細胞がに検出されるのに対し、PCNAが胞巣全体に散在性に陽性の場合はTUNEL法陽性細胞が胞巣内部に少数認められるのみであった。有棘細胞癌では、PCNA陽性細胞は多数認められたが、ボーエン病などと比べ少なく、TUNEL法では癌真珠や個細胞角化などに陽性で、比較的少数であった。一般に、PCNA陽性細胞は細胞増殖活性の強い部分に認められるのに対し、TUNEL法では、個別角化などの分化を示す細胞や分化傾向の強い細胞集団に陽性であった。腫瘍の増殖、アポトーシスの動態を理解するのに有用であることが確認された。尚、DNAラダーの検出は、検体が小さいためか十分なDNA量が得られなかった。今後は、可能ならもう少し症例数を増やすと共に、p53、bcl-2の免疫染色を施行し、これらの発現と増殖、アポトーシスの関係を検索する予定である。
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