皮膚癌病変部検体(日光角化症3例、ボーエン病5例、基底細胞癌5例、有棘細胞癌4例)について、ヘマトキシリン・エオジン染色による形態学的アポトーシス細胞および異型細胞の局在およびアポトーシス関連遺伝子であるp53およびbcl-2の免疫染色による遺伝子発現細胞の出現頻度と局在を観察し、比較検討した。日光角化症では、基底層から表層に向かい数層にかけてp53陽性細胞を認め、異型細胞の出現部位に一致していた。ボーエン病では、5例中4例で基底細胞より一つ上層の有棘層からほぼ全層にp53陽性細胞が散在性に認められ、異型細胞に陽性となる傾向が認められた。1例ではわずかに陽性細胞を基底層に認めるのみであった。また、有棘細胞癌では未分化型の方が分化型に比べ陽性細胞の割合が高かった。一方、これらの疾患では、bcl-2は陰性であった。基底細胞癌では、1例で腫瘍巣辺縁を中心に多数のp53陽性細胞が認められたが、他の4例では有棘細胞癌やボーエン病に比べp53陽性細胞の出現頻度は少なく、散在性に陽性であった。一方bcl-2は1例を除き腫瘍全体にびまん性に弱い陽性反応を認めた。以上より、p53については、日光角化症、ボーエン病、有棘細胞癌では腫瘍性増殖部に陽性で、分化した部分では陰性で、アポトーシスより腫瘍性増殖に関与していると考えられた。これに対し、基底細胞癌では一定の傾向が認められなかった。Bcl-2発現は基底細胞癌で全体に弱陽性であったが、形態学的にアポトーシスや異型性を認める細胞との関連は明らかではなかった。p53は皮膚癌のアポトーシスより腫瘍性増殖に関連していると推測された。一方、bcl-2は基底細胞癌の発症に関与している可能性が示唆されたが、その生理学的意味は不明である。
|