研究概要 |
現在、当教室において、胎仔マウス神経冠細胞由来の培養メラノサイトを長期維持している。 この細胞は、c-KIT、チロジナーゼおよびその関連蛋白を保有し、ドーパ陽性であるが、メラニン沈着はない。またこの細胞はstem cell factor(SCF)とendothelin-3(ET-3)に依存性でどちらが欠けても増殖が停止する。 本年度の研究では、 1) 樹立した神経冠細胞培養株の長期維持およびこの細胞が胎生期メラノサイトの特徴を継続して保持するか確認を定期的に行い、 1; C-KIT,TRP-1,TRP-2,チロジナーゼが継続して発現していることを免疫染色により確認した。 2; FACS解析によりc-KIT,TRP-1,TRP-2,チロジナーゼ陽性細胞の割合は、それぞれ98%、67%、46%、60%であった。異なった分化段階の細胞が混在している可能性が考えられる。 3; チロジナーゼ活性を継続して保持していることをDOPA反応により確認した。 4; 電子顕微鏡により、ステージlと思われるメラノソームのが殆どであった。 2) SCFおよびET-3に対する依存性の確認。 1; Alamr blue法にてこの細胞の増殖率の比較を行った結果、基本培地のみ(15%FCS添加E-MEM培地)で培養した場合は全く増加しなかったのに対し、SCF+ET-3では経時的に増加した。SCFあるいはET-3の場合もSCF+ET-3より少ないが、増殖が認められた。SCFとET-3の両者に生存を依存する細胞とSCFあるいはET-3単独で生存可能な細胞が混在すると考えられる。 2; SCF+ET-3で培養し、コンフルーエントに達した時点でSCFとET-3を除去し、Apop Tag^<TM>キットを用いて核の断片化を検討した結果、経時的にApop Tag^<TM>陽性細胞が増加したため、SCFとET-3非存在下ではこの細胞はアポトーシスに陥いることが示唆された。 以上の結果からこの培養細胞は分化段階の異なった細胞が混在していることが明かとなったため、一定の分化段階の細胞集団が得られるか培養条件をSCFあるいはET3単独に変更し、検討中である。
|