前年度の本研究において、胎生期のメラノサイト前駆細胞であるマウス神経冠細胞をstem cell factor(SCF)とendothelin3(ET3)にて培養、継代を重ねることにより、メラノサイト及びメラノプラストを長期培養することができた。これまでに新生マウスの表皮からメラノサイト及びメラノプラストのcell lineが樹立されているが、神経冠細胞に由来するものはこれが初めてである。 平成11年度の成果 この培養細胞は分化段階の低い細胞と高い細胞が混在しているため、培養条件を変えてみた。ET3のみを培地に添加したところ、DOPA養成の分化段階の高い細胞のみの細胞群となった。SCFのみを培地に添加した場合、DOPA陽性、陰性両者が存在したが、もとの細胞より陰性の細胞が増えた。 SCFのみで培養した細胞のなかでDOPA陰性の細胞は多角形であったため、その形状の細胞をコロニー分離を2回繰り返し純化したところ、全てDOPA陰性の細胞群が得られた。この細胞はSCFのかわりに12-oーtetradecanoyl-13-acetate(TPA)とcholera toxinを培養液に添加すると、DOPA陽性のメラノサイトに分化することを確認できたことから、この細胞は成熟メラノサイトに分化する能力を持ったメラノサイト前駆細胞であることがわかった。 現在、当教室の研究者により、この細胞群の1個の細胞由来のcell lineが確立されつつある。このcell lineはメラノサイトの分化及び色素産生の研究に非常に有用な手段となると期待される。
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