研究概要 |
Bag-1はBcl-2と結合する蛋白でアポトーシスを抑制する働きをもつ。同蛋白の発現の程度が腫瘍の進展様式および放射線治療への反応に影響をあたえると考えられる。放射線治療前の早期(T1-2)口腔扁平上皮癌22例においてBag-1の発現を調べ、臨床所見および予後との相関を検討した。免疫組織染色およびWestern blotによりBag-1を検索し、発現の強度とTNM分類、WHOによる組織分化度、組織診断時の浸潤様式(外向性、内向性)、後発リンパ節転移について比較検討を行った。Bag-1の強度発現は22例中13例(59%)に認められた。初診時リンパ節転移陽性6例および後発リンパ節転移3例計9例中8例(89%)にBag-1の強度発現が見られたのに対し、リンパ節転移陰性例では13例中5例のみ(38%)に同蛋白の強度発現がみられた(P<0.03)。またBag-1の強度発現はWHO組織分化度1の症例の45%に見られたのに対し分化度11では72%の症例にみとめ(P<0.02)Bag-1の強度発現がリンパ節転移および組織額的悪性度に関与していることが示唆された。また培養細胞をもちいた実験として放射線に抵抗性であるHSC3,HSC4および放射線に感受性が高いKB,SCC9の4培養細胞について、Bag-1の発現をWestern blotで検索した。Bag-1の強度発現がHSC3,HSC4で認められたのに対し、KB,SCC9では発現は弱く、放射線感受性にBag-1が関与している可能性が示唆された。
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