研究課題/領域番号 |
10670819
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 正敏 東北大学, サイクトロンRIセンター, 教授 (00125501)
|
研究分担者 |
熊野 宏昭 東北大学, 医学系研究科, 助手 (90280875)
窪田 和雄 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (40161674)
|
キーワード | ポジトロン断層法 / がん / 脳代謝 / 大脳辺縁系 / 抑鬱 / PET |
研究概要 |
本研究は、がん患者の情動変化を客観的に脳画像として評価する方法を開発し、心理テストを補足する情動検査法を確立することを目標とする。がん診断を目的として行われる全身ポジトロン断層検査(PET)データの内、脳ブドウ糖消費画像に対して統計画像処理を加え解析を行った72症例の脳画像を用い、健常者を対象として脳代謝の部位的変化を画像化した。結果として、帯状回、視床下部、海馬等の大脳辺縁系における広範なブドウ糖代謝の低下を認めた。低下部位は、Papezの情動回路をほぼ、包含するものであった。低下は、初診時検査で最も広範であったが、治療終了時には、ほぼ、消失した。このように、がん患者における大脳辺縁系の機能低下は、有意かつ比較的に広範であることが判明した。これは、重大疾患に罹患したこと対する不安の反映と考える。本研究の結果は、がんの診療における心理的ケアとサポートの重要性が画像として確認された。特に、脳代謝の変化が可逆的であることも、心理的サポートの重要性を裏付けるものであった。 がんに罹患し、自己の消滅を意識することは、心理的情動負荷の中でも最も強いと考えられる。Papezの提唱した脳内情動神経回路の機能低下が生じていたことは、患者が、非活動的、無感動、悲しみの中で検査と治療を受けていることを示唆している。がんの治療は、がんの病巣に対する攻撃のみでは、不十分であることが画像として示されたと考える。このように全身PETは、心身相関とその障害に起因する疾病の病態把握手段となると考えられた。
|