1.MR血管撮影(MRA)の撮像を1.5-Tの臨床用MR装置と4.7-Tの実験用MR装置を用いておこなった。プラスチックチューブを連結させた血管モデルを試作し、この内部に定常流、拍動流および乱流が通過する実験系を確立した。これをMR装置の中に設置して流速と流量を変化させ、time-of-flight法、phase contrast法およびガドリニウム造影剤を使用することによって、最適なMRA像の得られるパルス系列(TR、TE、フリップ角、フロー感度など)と造影剤の注入方法を検討した。 2.実験動物を用いた撮像実験をおこなった。全身各部位の血管系(動脈および静脈)についてtime-of-flight法、phase contrast法およびガドリニウム造影剤を使用し、最適なMRA像の得られるパルス系列と造影剤の注入方法を検討した。種々の程度の狭窄部位を人為的に作成し、time-of-flight法、phase contrast法およびガドリニウム造影剤を使用することにより、狭窄部位を最も正確に描出しうるMRAのパルス系列と造影剤の注入方法を検討した。 3.血管疾患が疑われる症例について、上記と同様のMRAの撮像を施行してMRAによる病変の診断能力を検討した。脳血管疾患(モヤモヤ病)と大動脈疾患(高安動脈炎)の症例についてMRAおよび造影MRAを施行し、その所見を従来の血管撮影の所見と比較した。最適化したMRAおよび造影MRAは従来の血管撮影と同等の所見を示し、脳血管と大動脈において高い診断能力を示すことを明らかにした。頭頚部血管腫の症例について造影MRAを施行し、その所見を病理組織学的所見と比較した。最適化した造影MRAは血管腫の診断とともに、その組織分類をも決定できることを示した。 4.現在はこれらの実験結果を参考にしながら、ボラティアや様々な血管病変を持つ症例に対してMRAを施行している。今度とも、全身各部位の動脈および静脈について最適なMRAが得られる撮影条件を検討していく予定である。
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