研究概要 |
まず正常ラットにおける血流、脂肪酸代謝、交感神経機能評価を試みた。血流はTI-201とTc-99m-tetrofosmin(TF)を、脂肪酸代謝はI-125-15-(p-iodophenyl)-3-R,S-metylpentadecanoic acid(BMIPP)を、交感神経イメージングはI-125-metaiodobenzylguanidine(MIBG)を用い、尾静脈より投与し、屠殺後に各心筋部分のトレーサ集積を測定した。心筋虚血に関しては虚血左前下降枝を結紮することにより急性虚血モデルを作成し、病変部の血流、脂肪酸代謝の変化を評価した。血流はTIおよび、TFを、脂肪酸イメージングはBMIPPを用い評価した。急性虚血モデルを作成後に血流製剤とBMIPPを同時に尾静脈より投与し、20分後に屠殺しトレーサ分布を測定した。 正常ラットでは、心筋内TIとTFの分布は各心筋部位、すなわち前壁、側壁、中隔、下壁、さらに心外膜、心内膜側でほぼ均一な分布を示した。一方、MIBGの分布は前壁、側壁、中隔、下壁各部では同等であったが、心内膜と心外膜での集積を比較すると心内膜側で低く投与180分後にはその比は0.8であった。BMIPPの分布は均一で静注15分後の心内膜、外膜比も0.98とほぼ1に近い値を示した。5分間の急性虚血においては、虚血中心部では血流が正常部の0.36±0.08に対してBMIPPの集積は0.34±0.07と同等の低下を示した。一方虚血辺縁部では血流低下が0.39±0.11に対してBMIPPの低下は0.63±0.08であり血流低下に対して有意に脂肪酸集積の相対的高値を示した。20分の虚血においても血流低下程度は高度であるものの5分虚血と同様に血流低下に対して有意に脂肪酸集積の相対的高値を示した。以上より急性虚血においては血流低下に比較し心筋の脂肪酸利用は相対的に高く、心筋脂質プールの増加の関与が示唆された。以上より心筋血流、代謝製剤を使った画像評価法は心筋虚血病態解明に有用であると考えられた。
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