研究概要 |
テクネチウム心筋血流製剤における肝臓および腸管の集積が心筋画像に及ぼす影響を検討する基礎実験として,^<99m>Tc-tetrofosmin(以下,tetrofosmin)を正常ラットに投与し,各臓器への分布をガンマカメラ(以下,C)による測定値とウェル型シンチレーションカウンタ(以下,W)による臓器摘出後の実測値で比較検討した.実験動物は正常ラット:雄Donryu(6-7週齢,平均体重208±45.9g)33匹を使用した.測定および解析法はtetrofosmin約60MBq(0.2ml)を尾静脈より投与し,5,10,15,30,45,60,90,120分後にCで全体像を撮像,その直後に,心臓,肺臓,肝臓,大腿筋,腸管(十二指腸〜直腸)を摘出し重量測定後,Wで放射能(%ID/g)を測定した.Cによる解析では各臓器に関心領域を設定し,投与量に対する%uptake/pixelを算出した.両者より各臓器におけるWとCから算出した集積率,C/W比および各臓器/心臓比を比較した.心臓ではWから算出した集積率は投与後30分(1.671±0.306%)まで増加したが,Cでは投与後10分(2.038±0.919%)でピークとなり,その後やや減少傾向を示した.特に10分,60分で両者の差(C/W比:約1.6倍)が大であった(p<0.04).肝臓では,Wから算出した集積率は投与後5分(0.768±0.193%)から経時的に減少の傾向を示しが,Cでは全体にWより高く算出され,特に10分(1.912±0.584%,C/W比:約3.2倍)で高値を示した.肝臓/心臓比の経時的パターンは両者に差はみられなかったが,Cで有意に高値であった(p<0.0001).十二指腸と上部小腸の集積率は投与後10分(1.204±0.591%,2.202±1.899%)で最大に,中間部小腸では投与後30分(2.590±0.994%)まで増加し,その後減少の傾向を示した.以上より,各臓器の集積率はWによる実測値に比し,Cで有意に高値を示した.両者の差は経時的に変化し,投与後早い時期にその差は大であった.特にCとWの心臓の摂取率は投与後10分と45-60分で大きな乖離がみられた.これらの原因の一つとして,肝臓・腸管(特に十二指腸〜上中部小腸)からの散乱線の関与が示唆された.
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