研究概要 |
放射免疫療法の治療効果を予測する際,組織低酸素の有無や程度は重要な因子であるが,従来は確認が困難であった.また,種々の化学療怯やBMRを組み合わせる場合,腫瘍組織の低酸素は腫瘍血管新生のトリガーとなる.今年度は,組織の低酸素状態を評価するトレーサとして,4,9-diaza-3,3,10,10-tetramethyldodecan-2,11-dione bisoxime(HL91)の特性評価を主にin vivoで行った.HL91はニトロイミダゾール基を持たず,Tc-99m標識化合物であることが特徴である.また,同時に血流指標のトレーサであるTl-201と比較検討した. 主要細胞とのin vitro結合アッセイには,マウス単球性白血病細胞P388を用い,低酸素状態と大気中での有酸素状態での各トレーサの細胞への結合率を比較した.有酸素状態ではHL91のP388へ結合は低値を示した(2.4±0.11% at 20min,37±0.14% at 240min)が,低酸素状態ではTl-201の結合率が低下した180分以降に,HL91の結合率が上昇する現象が認泌られた(2.8±0.11% at 20min,40.4±091% at 240min). in vivoモデルには,マウス単球性白血病細胞P388とLewis Lung Cancer細胞を用いた.Lewis Lung Cancer細胞を移植したマウスを用いて経時的な体内分布を評価した.Tc-99m標識HL91は,投与早期に腫瘍へ高集積を示し,経時的には洗い出されるものの(3.72%ID/g, at 15min, 2.55 at 60min, 1.73 at 120min),バックグラウンド放射能はさらに速く消失した(4.47%ID/g, at 15min,1.12 at 60min,0.37 at 120min).Tl-201はバックグラウンド放射能が高値を持続したため,Tc-99m標識の方がTl-201よりも,良好な腫瘍集積性を示した. HL91は,Tl-201とは異なった動態を示すため,腫瘍診断において新たな情報を付加する可能性が期待できる.すなわちこのトレーサは,低酸素組織への親和性を示すため,放射線感受性の予想に利用できるのみならず,組織低酸素により誘発される血管新生および血行性転移の危険予知にも展開できる。
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